「立憲主義という企て」(井上達夫東大教授)から(その8)
辛辣な言葉が目につくが、論理により真剣な議論が展開されて入ることに驚きを感じる。
(9条の抑止効果)
違憲の事実は半世紀以上にわたって存続し、かつ国民の多数派によって支持ないし容認されてきた。この「違憲の事実」の持続により、9条の規範的意味はその事実を「合憲化」するよう変遷したことになる。
しかし、多くの多くの護憲論者はかかる「9条変遷論」を斥け、「9条」が自衛隊と安保に違憲性の刻印を押し続けてきたからこそ、自衛隊の規模や安保体制下での日本の役割は現在の程度にとどめることができたと主張する。
自衛隊・安保の現状を「9条がなかったらもっとひどくなっていたはずで、それに比べればまだまし」と事実上追認し、自らその下で安全保障便益を享受しながら、そのことへの規範的コミットメントを回避することにより、現状の事実的受容を正当化する倫理的責任を放棄している。これは、実に見事な「大人の欺瞞」である。
護憲派主流は、憲法9条の「凍結」を主張している。憲法の凍結に固執しながら、防衛予算の対GNP比がじりじりと増え、自衛隊の海外派遣の既成事実が積み上げられていくのを、「それでも9条がなかったら、もっとひどくなっていたろう」という反実仮想的主張を慰めとして追認していく姿勢は、「現実への倫理的ただ乗り」以外のものであるだろうか。
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