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2020年5月 1日 (金)

渋谷健司氏の論考(5)

新型コロナウイルスと賢く付き合うために
 様々な条件が整備されたとしても、「国民全員にPCR検査」とは極論だと思う方も多いかもしれない。当然ながら、一足飛びに国民全員検査を実施するのは非現実的だ。まずは、特定の地域で住民の一定割合を対象にパイロット的に開始することが現実的だ。例えば、東京23区のどこかでパイロット的な取り組みを開始することにより、「全員検査戦略」の感染抑制効果を確認しつつ、徐々にエリアを拡大するアプローチが考えられる。
 パイロット事業のデータは、首都圏全体の感染率の動向把握にも活用でき、社会的接触の抑制措置の強化・緩和を行う上での基準としても活用できる。また、抗体検査の検証(まずは医療機関などに保存されている過去数カ月分の血清の調査、そして、医療機関・医療従事者、さらには、一般人口へと拡大)も併せて進めれば、一定水準の抗体が確認された方をPCR検査の対象から除外する等「全員検査」をより効率的に進める知恵も増えてくるだろう。
 現に、英国でも、筆者の友人らが書簡を送った2週間後に、マット・ハンコック保健相が、「今後1年間で最大30万人を対象とした大規模なPCR検査を実施する」と発表した。最初に、2万5000人に自分で鼻と喉から検体を定期的に採取してもらい、新型ウイルスに感染しているかを調べる。さらに、約1000世帯の成人を対象に定期的な血液検査を行い、抗体保有者の人口比率を分析する計画だ。コロナとの戦いを長期戦と覚悟し、ロックダウンの繰り返しを避けるための出口戦略として、その後の対象拡大も視野にいれているようだ。
 こうした長期戦をにらんだデータの積極的な収集・蓄積及びそれを活用した戦略的な隔離や各種施策の適切な実施によって新型コロナウイルスと賢く付き合い、犠牲者を最小限にしながら社会経済を回復させることは可能かもしれない。日本もこれまでの対策を再検討し、緊急事態宣言・ロックダウンの繰り返しを避ける出口戦略に向けた議論を進めることが何よりも重要だ。
「国民全員検査」を非現実的と決めつけるのは簡単だ。しかし日本の官民挙げての英知を結集し、継続的に実現に向けた努力を進めれば、それも全くの夢物語でもないであろう。私の提案には当然、異論、反論があると思う。我が国のコロナ対策の充実に向け、科学的かつオープンな議論が広く展開されることの一助となれば幸いだ。

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